高い基本性能を誇るAIRSPY Miniの活用はエアバンドフィルターやアップコンバーターを活用しよう!

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AIRSPY MiniはただのSDRドングルではありません

 
AIRSPY Miniパーソナルコンピューターの性能が上がり、SDR(Software-defined Radio)による受信が一般的なものとなってきた現在、数多くのSDR用フロントエンドが発売されています。小型化も進み、USBドングルタイプの製品も数多く出ていますが、その中でAIRSPY R2で基本性能の高さとSDR#ソフトウェアの使いやすさで、SDRのスタンダードとなった感のあるフランスAirspy社もUSBドングルタイプの製品AIRSPY Miniを発売しました。このAIRSPY Miniは、Airspy R2のアーキテクチャをベースに開発された24MHzから1700MHzのVHF帯とUHF帯の受信が可能なポータブルで高性能な小型ハードウェアです。
 
AIRSPY Miniは、Rafael Micro R820T2チップを採用し、高品質のオーバーサンプリング12ビットADCおよび最先端のDSP技術をもとに、低IFアーキテクチャを活用しているというだけに、他のUSBドングルタイプの製品に比べるとやや価格が高めに設定されています。最近では2〜3,000円で買えるUSBドングルタイプの製品も多く出ていますが、価格を安く抑えるために基本性能を犠牲にしている製品があることも事実ですので、AIRSPY Miniとそういった製品群との差を検証してみることにしました。
 

アルミダイキャストのボディがヒートシンクの役割を果たします

 
USBドングルタイプのような超小型の受信機では、その小さな筐体の中に部品が詰まっていますので、放熱をどうするかが課題となっています。AIRSPY Miniはアルミダイキャスト製の筐体を採用し、ボディ自体がヒートシンクの役割を果たすことで熱を逃がす構造になっています。その効果がどのくらいあるのか、他社製のプラスチック筐体のドングルと比較してみました。室内の温度が約24℃ほどの環境で、PCにドングルを挿しSDR#を起動させてどの程度温度が上昇するかの測定と、SDR#ソフトウェア上で温度上昇による周波数ドリフトが見られるかどうかを検証してみました。
 
温度上昇の比較
 
AIRSPY Miniと他社のプラスチック筐体のドングルをPCに挿し、それぞれの筐体の表面に温度センサーを貼り付け、SDR#を起動させて温度変化を観測しました。起動後30分ほどで2つのドングルはいずれも周囲の温度よりも10℃程度上昇しました。上の写真で左側がAIRSPY Miniに貼り付けた温度センサー、右側がプラスチック筐体のドングルに貼り付けたセンサーの示した温度です。その後AIRSPY Miniに貼り付けたセンサーの温度は40℃超まで上昇しましたが、これは筐体の温度を上げて外部に熱を逃がすことで、内部温度を下げるような動作をしている為と思われます。プラスチック筐体のドングルはそこまで表面温度は上昇しませんでした。このため熱が内部にたまっていることが想像できます。
 
AIRSPY Mini温度ドリフト比較
 
そこで温度上昇による影響があるかどうかをSDR#を2画面立ち上げて、2台同時に受信しながら確認しました。すると上の画像のように、左側のAIRSPY Miniではエアーバンドの124.35MHzを受信していても全く周波数ドリフトなども無く、受信できていました。ところがプラスチック筐体の廉価版ドングルでは15kHzほどの周波数のドリフトが起きていることがSDR#のスペクトラム表示からも見て取ることが出来ました。やはりプラスチック筐体の場合内部に熱がこもる可能性があり、それが周波数ドリフトの原因となる可能性が高くなりそうです。筐体自体から熱を逃がすという原理は、Keysightなどの高級ポータブル型スペクトラム・アナライザーField Foxシリーズなどにも採用されており、同製品は小型化のため本体にファンなどを装備していない代わりに、熱をアンテナ端子から逃がす構造になっています。このAIRSPY Miniも本体から熱を逃がすため、PCに挿す時は上下になるべく空間を設け、ノートPC等で使用される場合は角度をつけるなどしてスペースを確保されることを推奨します。
 

エアーバンドをワッチするならば、ABF128SMAを組み合わせてみましょう

 
AIRSPY Mini_and_ABF128SMAところで当社から直線距離で約3キロほどのところに東京スカイツリーがあって、そこから強力な放送局の電波が吹かれているため、当社の近辺は所謂都市ノイズが沢山飛び交っている状況にあります。近年において人工ノイズ(都市雑音)の増加は特に長波〜短波の遠距離受信では避けることのできない問題となっていますが、エアーバンド受信においても、こうした雑音をカットすることは受信条件の改善のために有効な方法です。そこでAIRSPY Miniでエアーバンドを受信する際にお薦めしたいのが、当社のエアーバンド・フィルターABF128SMAを併用することです。この高性能フィルターを受信機とアンテナの間に取り付けることにより受信機のエアーバンド周波数帯域でのフロントエンド特性を改善し、TV放送などの強力な信号からの妨害を減衰させエアーバンドへの回り込みと感度抑圧を防止します。コンパクトでスマートな設計により、AIRSPY Miniとの相性もばっちりです。90MHz以下の放送帯周波数また172MHz以上のテレビ放送の周波数に対し40dBmの減衰量が得られますので、IL=4dBを考慮しても、その効果は大きく、エアーバンドがABFを挿入しない場合に比べてスッキリ聞こえます。下の写真はABF128SMAを挿入しない状態(左)と挿入した状態(右)の比較です。左側のフィルタを挿入していない状態では目的の周波数の周辺に、放送局の強力な電波からの被りが生じて、目的の電波がマスクされたようになっています。フィルタを入れることにより、これが改善され、90MHz以下のFM放送の電波による妨害波や、172MHz以上のテレビ放送による影響は少なくなっています。当社の環境ではアンテナ無しでもFM放送が聞こえるくらいの強電界ですし、電気設備から発生する高調波の影響などもありますので、隣接する強い電波の影響を抑えられるバンドパスフィルターの使用はエアーバンドをワッチするには必須のようです。
 
AIRSPY MiniとABF128
 

AIRSPY Miniで聞けるのはVHF,UHFだけではありません

 
AIRSPY Mini_and_SpyVerterAIRSPY Miniは勿論VHF、UHFを聞くことに最適化したソフトウェア受信機ですが、だからといって30MHz以下の周波数を聞くことを諦める必要はありません。Airspy社はHF帯の電波をコンバートするアップコンバーターSpyVerter R2を用意しています。SpyVerter R2アップコンバーターは、非常に手頃な価格でAirspy Miniに追加することで周波数カバレッジを拡張し、ハイエンドのアナログ設計によりHF帯での高いダイナミックレンジ、周波数安定度、および感度を確保することが可能になります。元々はAIRSPY R2と組み合わせて使用するために開発されましたが、Miniでも問題なく使用でき、電源もMiniから供給可能なので、別にアダプタを用意する必要がありません。MiniとSpyVerterの組み合わせでHFからUHFまでをカバーすることが可能になるのです!ぜひ試してみてください。SpyVerterの使用方法の詳細は別途掲載する予定ですのでお楽しみに。
 
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